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『「わかり合えない」」からはじめる国際協力』
吉岡大祐 著
旬報社 刊
2024年1月15日 発行
1870円(税込)
220ページ
対象:小学校高学年以上

あなたは「国際協力」で一番大切なことって、なんだと思いますか?

吉岡大祐さんは、22歳の時に単身でネパールに入り、以来25年間
最貧家庭への教育支援を続けています。
ネパールに着いて間もない頃、吉岡さんは政府高官と会える機会を得ます。
繋いでくれたネパールの友人は珍しく「ベリーインポータント」を繰り返したそうです。
約束の時間に絶対に遅れてはならないと、吉岡さんはタクシーに乗ります。
ところが、運転手は途中で勝手に車を止めて店でお昼を食べ始め、その間に定食屋の隣の茶店の女将が
タクシーのボンネットに青菜を干し始めます。運転手は怒るどころか、その茶店で食後のお茶を飲みだし、
着いたのは約束の時間を1時間半も過ぎてから。しかし、焦り憤る吉岡さんに対して、ネパールの人たちは、
鷹揚に答えます。「ノー・プロブレム」と。
そんな一方で、ある日本人の支援者がネパールの貧しい人たちのためにと、物資援助を止めている
所に、「古着」を山のように背負ってやってきます。大喜びで受け取る村人ですが数日後には
その「古着」がバザールで売られ、支援者は大憤慨します。飛行機の重量超過料金まで払って、
汗をかきかき運んできたのに!と・・・。

相手に対する理解なくしては、国際協力はなし得ないと吉岡さんは伝えつつ、お互いに
わかり合える関係になるためには、「わかり合えない」所から、関係をスタートさせることだ
と伝えます。
私たちはすぐに「自分だったらこうするのに!」という尺度で人を見てしまいます。
この「尺度」を捨てて相手の立場に身を置いてじっくり考える。
相手の良さは、「ある」のではなく、「見る」かどうかー。

吉岡さん自身、失敗や後悔を重ねながら、しかし、25年間ネパールの人々と共に生き続けてきたからこそ、
伝わる言葉がこの本の中にあります。熱い思いが「キレイゴト」ではなく私たちに伝わってきます。

2004年に吉岡さんが支援者たちと共にネパールに作った小学校は今年で20周年。
日本の若者たちに、こうした「草の根の国際協力」のバトンが繋がっていくことを心から願います。

(余談)
「ベリーインポータント!」と口を酸っぱくして政府高官との会合を準備してくれたネパールの
友人は吉岡さんが1時間半遅刻して慌てて電話をかけた時に「じゃ、これから家を出るね」と飄々と
返事をして、会合は結局3時間遅れで始まったそうです。
「ノー・ブロブレム!!」\(^o^)/                      (く)

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