番外編ベスト 👍 『心やさしく』
ロバート・コーミア 作
真野明裕 訳
徳間書店 刊
2002年6月30日 発行
1650円（税込）
240ページ
対象：中学生から
鬼才コーミアが迫力ある筆致で描く、少女と「怪物」の出会い
ヤングアダルト文学の古典というべき『チョコレート・ウォー』（現在、品切れ）の作者による作品。手加減なしの描写の連続に驚きを覚える方もいるかもしれません。
自分の居場所を探して、やさしくしてくれる相手を求めて家出を繰り返していた少女ローリ。ある日、両親を殺した18歳のエリックが釈放されたというニュースを見て、魅了されてしまいます。彼に会いたいと後を追い始めました。実は、子どものころに1度だけエリックに会ったことがあったのです。
エリックは母親から過剰なまでのやさしさを与えられていたものの、継父が間に入り込んだことでそれを取り上げられてしまいました。その反動でやさしさを求め、少女たちを次々に手をかけます。彼の愛情の求め方はとても歪んだものでした。
二人は出会い、共に旅をしていく先にあるものとはーー？ 衝撃的なラストが待っています。
世界は光り輝く、いいことずくめのユートピアではないことを承知している主人公たちは、悲惨なように見えつつも現実を生き抜くたくましさをも感じます。彼らの言動を全肯定はできなくとも、様々な「タラレバ」を想像します。もし◯◯でなければとか、○○していたら、とか。
一息に読ませる筆力は抜群！ 読み応えある骨太な作品を探している方はぜひ、手にしてみてください。
読み終えたあと、いろいろと考えさせられることの多い１冊です。 （す）
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