ベスト 👍 フィクション
『ロジーナのあした 孤児列車に乗って』
カレン・クシュマン 作
野沢佳織 訳
徳間書店 刊
2009年4月 発行
1540円(税込)
272ページ
対象:小学校高学年から
この大草原のどこかに、家族になってくれる人がいるのかな……
家族みんなを事故や病気で次々と亡くし12歳で天涯孤独となってしまったロジーナは、東海岸のシカゴから孤児を乗せて西部へ向かう列車に乗せられることになります。孤児や親から捨てられた子どもたちが新しい家族を見つけるための列車には、22人の子どもたちが乗っており、一番年上のロジーナは引率の女先生から子どもたちの面倒を見るように言いつけられます。責任を負わされて不満を抱えながらも、自分になついてくる小さなレイミーや、ケンカばかりしているサミーとジョー兄弟の世話をするロジーナ。列車が着いた西部の町で孤児たちは、彼らを引き取りたい家族と対面し、気に入られた家族とともに一人、また一人と去っていきます。けれども「奴隷を欲しがっている家族に売られる」という噂を信じていたロジーナは、まるで自分たちが家具でも見るような目で品定めをされているように思えてなりません。実際に彼女を引き取ろうとしたのは、年取った家族の介護人を必要としていた人や、13人の子どもの母親代わりを探していた男の人のなどで、ただで働く召使いが欲しかっただけなのでした。そして最後まで行き先の決まらないロジーナは、終点の地カリフォルニアで職業訓練学校に行かされることになるのですが……。
自由を求めてポーランドからアメリカへ移住をしてきた両親が死んでしまったとき、頼れる親戚もいないロジーナは孤児になってしまいました。路上生活や孤児院など悲惨な体験もした彼女が、自分より弱い立場の幼い子を思いやる心を持ち続けられたのは、家族に愛され大切にされた記憶がしっかりと刻み込まれていたからに違いありません。「使用人ではなく、自分を家族として愛してくれる人とともに暮らしたい」という、12歳の子どもの切実でしかし当たり前の願いがかなえられるのか、読者はハラハラしながらロジーナの旅を見守っていくことになります。結末にどんな喜びと安堵が用意されているか、読み終えたときにはきっと温かな希望が満ちていることでしょう。(か)
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