ベスト 👍 フィクション
『サメのイェニー』
リーサ・ルンドマルク 作
シャルロッテ・ラメル 絵
よこのなな 訳
岩波書店 刊
2025年2月 発行
1870円(税込)
156ページ
対象:小学校中学年から

わたしはサメなんだ。わたしのままがうれしいんだよ!

小学校2年生のイェニーは、本を読むのが大好きな女の子。教室では手を挙げて発言するのが好きではないのでいつも黙っていますが、それは決して先生の質問がわからないからではありません。頭の中ではいつも、自分の大きな声の考え事が聞こえているのです。そしてイェニーは「おとなしい。なんにも話さない。自分のしたいことをする」サメのことを、自分とそっくりだと感じています。学校では一人でいることの多いイェニーですが、同じ団地に住んでいるアミーナとはいい友だちです。アミーナも絵を描いたり本を読んだりするのが好きな子で、二人は一緒にいてもお互いが好きなことをして、どちらかが家に帰らなくちゃいけなくなるまで時間を過ごします。

ある日担任の先生が、お昼休みもクラスメイトと遊ばずに一人でいるイェニーに「勇気を出して、自分を変えて」と言うと、自分のことをわかってくれない先生に対して彼女は猛烈に腹を立てます(そう、まるでサメのように!)。そして怒りながら帰ったその日、ごみ捨て用のコンテナの後ろに水族館<海の世界>へのドアを発見しました。どんなところなのか確かめようと入っていった先にあった大きな水槽でイェニーが出会ったのは、一匹のサメだったのです! 悩みを打ち明けたイェニーにサメは「自分をかえるんじゃないよ。先生には、わかってもらえるよ。おまえさんはサメだ、ということを先生に見せれば」とアドバイスをしてくれました……。

ありのままの自分をわかってほしいというのは、誰しも心の中に持っている素直な思いでしょう。けれど、そうすることを「わがまま」と感じたり、誰かの期待に応えなければという思いが先に立って、本当に自分がありたい姿でいることを躊躇することはないでしょうか。イェニーは小学2年生ながら驚くほど自分をしっかり持っており、それを安易に手放しません。おとなしくて、一人でいるのが好きで、大人から見ると心配な面のある子どもかもしれませんが、彼女の中には譲れない、変えたくない「自分」がきちんと存在します。それを担任の先生にわかってもらうために書いたイェニーの手紙は、潔くてとてもかっこいい!

イェニーのような子も、イェニーのような子が周りにいる大人も、勇気と気づきをもらえるスウェーデン発の楽しい物語です。(か)

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