ベスト 👍 フィクション
『ちょっとだけ ともだち』
なかがわちひろ 作
のら書店 刊
2025年4月 発行
1650円(税込)
55ページ
対象:小学校低学年から

ぼくたちは、ずいぶんちがうし、いろいろあわない。でも……

すてきなひとりぼっち』『ぼくは、ういてる』に続く、一平くんのお話第3話。
保育園に通い始める妹に「おともだち100にんできるわよ~」と言うお母さんに、「そんなのむりにきまってる」と心の中でつぶやく一平くん。でも自分の家族は、お母さんもお父さんもおばあちゃんも(妹も!)みんなたくさんの友だちがいる様子に、なんとなく落ち着かない気持ちです。そして、友だちがいないように見えていたおじいちゃんにも、若い頃にかけがえのない友人がいたことを知って焦った一平くんは、何とかして友だちを作ろうといろいろチャレンジを重ねます。でもなんだかうまくいきません。友だちを作るのは、そんなに難しいことなのでしょうか……。

私たちは大人も子どもも、「友だち」がいないことを極度に恐れています。そしてなんでも自分と同じように考えたり楽しんだりしてくれる「友だち」を求めては、ちょっとでも違うことがあると、裏切られたり傷つけられたように感じてしまわないでしょうか。一平くんも、カメが好きな同級生のヒロくんと、カメ以外には趣味に共通点がないことに初めはがっかりします。でも、おじいちゃんが話してくれた友人との関係から、一平くん自身が「友だち」について新しい視点に気づいていくところは、狭いトンネルから大空の下に出たように気持ちが開放される感覚があります。友だちは自分自身であることを大切にした先に自然と生まれてくる関係であり、大切な宝物を同じ気持ちで見つめられる相手が見つかれば、それは「ちょっとだけ」だったとしても「かけがえのない」友だちになるのだということが、素直に信じられるはずです。

ひとりぼっちでいること、周囲からちょっと浮いてしまっていること、友だちがいない(少ない)こと―—マイナスに捉えられがちなものの中にあるきらめきを、どこにでもいそうな一人の男の子を主人公にして描いたこのシリーズは、とても大切なことを伝えてくれます。その上どこにも説教臭さがなく、子どもの時に出会えたらきっとこの本が「友だち」になっただろうと想像されるすてきなお話です。(か)

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