ベスト👍 フィクション
『ソロ沼のものがたり』
舘野鴻 作
岩波書店 刊
2022年5月26日 発行
定価2200円(税込)
178ページ
対象:小学校高学年から
見よ、小さき者たちの生きざまを! ~生きものたちを描いたファンタジー。
『しでむし』『がろあむし』などの昆虫を緻密に描いた絵本で知られる舘野さんが、なんとファンタジー作品を上梓されました。絵本作家がなぜ? と思う方も多いでしょう。かくいうわたしもその一人。しかし、読み進めていくうちにそんな「なぜ?」はどうでもよくなりました。
本書は暗い森の奥にある、赤黒い沼を舞台に小さな生きものたちが暮らすさまを綴った短編連作です。「ソロ沼御前」「みずすまし」「おけら先生」「じゃこうあげは」「ぎんいろてんとう」「やんまレース」「おさむし戦争」「かすみあまつばめ」「かえるのヨズ」という章立て。生きものをたくさん、鋭く見つめてきた著者だからこそ、描けた世界と言えそうです。小さな生きものたちの描写はもちろんのこと、自然描写が細やかで、とてもいきいきとしています。
個人的には「おけら先生」の話が好きです。
また、なかでも最後のお話「かえるのヨズ」は、読み手によって受け取り方に大きな差が出るだろうな、と思いました。一人の読者であっても読む年齢や、そのときの状況で心に響くものは変わりそう。読んだ人同士で、ああだこうだと話をしたら、一人では気づけないことにハッとしそうです。
そして、挿画と挿絵も舘野さんが手がけられています。とても凝った美しい造本です。手元に置きたくなる、「本」としての魅力にも溢れています。ぜひ、多くの方に手にしてほしいと思います。 (す)
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