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『竜が呼んだ娘1 弓の魔女の呪い』『竜が呼んだ娘2 闇倉の竜』
柏葉幸子 作
佐竹美保 絵
講談社 刊
2024年1月23日 発行/2024年3月26日 発行
本体1,870円/本体2,090円(ともに税込)
255ページ/315ページ
対象:小学校高学年以上
その村では、10歳になると村を出ていく子がいるーー
主人公の少女ミアには同年代の子どもに比べてわずかなハンディキャップがある。2歳の頃に母親に捨てられて叔母に育てられたミアは、体が小さくて動きがぎこちなく、話すのもゆっくりだ。だから、ミア自身は考えもしなかった。10歳になったら、まさか自分が竜に呼ばれて村を出ていくことになるなんてーー。
ミアが暮らす村は罪人の村といわれ、切り立った崖が牢獄のようにそびえる深い谷底にある。この村では10歳になると、竜に呼ばれて外の世界へ出ていく子がいる。竜に呼ばれるのは名誉なことである一方、誰が呼ばれるのか、どこに連れていかれるのかは誰にもわからない。
その年、村にやってきた竜が呼んだのは、ミアだった。誰もがなぜと訝しみ、ミア自身も安心できる叔母のそばを離れてたった一人で外界に出ることに怯えていたが、あることを知り、竜に従うことを決意する。
そうして初めて外界をのぞいたミアが連れられた先は、王族や竜や魔女が集う王宮だった。ミアは伝説の勇者と呼ばれるウスズ様の部屋子になるが、肝心なウスズ様の姿は見当たらない……。
以前に朝日学生新聞社から出ていた『竜が呼んだ娘』(絶版)をもとに加筆修正し、新装版として刊行されたシリーズ。孤独な少女が種族や地位を超え、様々な人物との関わりのなかで成長するストーリーは巧みで、読者はいつの間にか少女に自己を投影しながら謎を解き、竜とともに空を舞って冒険し、大切なものを守るために邪悪な魔女に果敢に立ち向かう。気弱な少女は自身と対峙することで思考力を培い、正義感と思いやりを武器に物事に正面からぶつかっていく。その姿は不器用であるからこそ胸を打つ。物語を一気に読む喜びを久しぶりに体感した本である。
今月下旬にはシリーズ3作目『竜が呼んだ娘3 魔女の産屋』が刊行予定。入荷を今か今かと待ちわびている。 (い)
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