ベスト
ノンフィクション
『元気？ 世界の子どもたちへ』
長倉洋海 著
朝日新聞出版 刊
2023年9月 発行
定価3300円（税込）
112ページ
対象：小学校中学年から
魔法の言葉「やぁ、元気？」を道具に出会った、世界各地の子どもたちの写真
1980年から世界の紛争地や辺境の地を取材し、そこで出会った人々を写真に収めてきた長倉洋海さん。本書は2021年4月から2年間、朝日小学生新聞に連載された「長倉洋海 ぼくが出会った世界の子どもたち」を再編集したものです。長倉さんの作品を追いかけてきた人にとっては、懐かしい子どもたちに再会できる写真集でもあります。
見開きページで一つの地域と一人の子どもが紹介されていますが、どの写真も子どもたちのはじけるような笑顔と真摯なまなざしが読者の目をくぎづけにします。写真からは子どもたちが暮らす地域の自然や文化が感じられ、そこでは子どもたちがコミュニティーの一員としてしっかりと生きている手触りがあります。家族の中で重要な労働力を担っている子どももいて、物質的には決して豊かとはいえない環境にあっても、これほど生き生きとした表情を見せることの背後に何があるのか―—自分の考える“幸せ”の定義がいかに狭いものであったかをしみじみと感じさせられます。
子どもたちが長倉さんにこんな素敵な笑顔をみせてくれるのはなぜでしょう。それはきっと、長倉さん自身が被写体と同じところに立ち、同じ視線の高さで「やぁ、元気？」心を開いて話しかけるからではないでしょうか。「今は“長倉洋海にしか撮れない写真”を目指している」とあとがき“君に伝えたいこと”に書かれている長倉さんですが、この写真集を見ればもうそれはすでに実現していると確信を持って言うことができるのです。（か）
★巻末のQ＆Aでは「海外での食事はどうしているの？」「トイレやお風呂がないときは？」といった生活のことから、「写真を撮って怒られたことは？」「旅のジンクスはありますか？」など海外取材についてのユニークな質問が掲載されていて楽しいですよ。
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