クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『平安のステキな!女性作家たち』
川村裕子 著
早川圭子 絵
岩波書店 刊
2023年10月 発行
1089 円(税込)
254ページ
対象:中学生以上

千年前の女子たちも、一生懸命生きていた!

大河ドラマの影響で『源氏物語』の作者・紫式部とその時代についての関心が高まっています。若者だけでなく、学生時代の苦手意識から「古典」は縁遠いと感じていた多くの大人たちにも手に取りやすい、作品の魅力と作者の人となりを楽しく伝える王朝文学入門書をご紹介しましょう。

平安文学の研究者である川村裕子さんはこれまでにもジュニア新書で『平安女子の楽しい!生活』や『平安男子の元気な!生活』などを著し、平安貴族たちの暮らしや考え方を古典作品の現代語訳を引用しながら楽しく解説してきました。本書はそれらに続く第3弾で、今に残る文学を書き残した有名な女性作家たちの人生と作品を取り上げています。
清少納言の『枕草子』や紫式部の『紫式部日記』はもちろんですが、藤原道綱母(『蜻蛉日記』)や和泉式部(『和泉式部日記』)、菅原孝標女(『更級日記』)など、古文や歴史の授業であっさり紹介されただけで記憶もおぼろげな作品を通して当時の女性たちの生き様を目に見えるように描きなおしており、千年前の女性たちがまるで隣にいる友人や同僚のように感じられてきます。古文や和歌が難しいのは当然ですが、そこに込められた心情(ライバルに対する嫉妬、妻と夫の心のすれ違い、好きなことへの情熱)は今を生きる私たちも十分に共感できるとわかるだけでもしめたもの! 現代語訳や例えがいささか“イマドキ過ぎる”気もしますが、そこは若い人たちの拒否感を和らげるための著者の作戦なのかもしれません。

平安の女性作家たちは、男性の様に直接的に世の中を変える政治力は持ちませんでしたが、千年読み継がれる作品を書き残すことで現代にも影響を及ぼしています。それこそ文学を含む芸術の持つ普遍的で大いなる力なのではないでしょうか。(か)

★ご注文はお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メール narnia@kyobunkwan.co.jp