クリーンヒット ⚾ フィクション
『クリスマス・キャロル』
チャールズ・ディケンズ/オスカー・ワイルド/村岡花子 作
村岡花子 訳
村岡美枝・村岡恵理 翻訳編集
講談社 刊
2024年10月 発行
1980円(税込)
231ページ
対象:小学校高学年から

クリスマスに読みたい名作を村岡花子の美しい訳でお届けします

ケチで気難しい老人エビニーザ・スクルージの元にクリスマスの前夜、三人の幽霊が訪れます。彼らに連れられて過去・現在・未来を見たスクルージは何を思ったでしょうーー。

イギリスの文豪C.ディケンズが1843年に著した古典的名作を、『赤毛のアン』の村岡花子が1952年に翻訳した作品が装いも新たに登場しました。ディケンズは物語を通して社会に潜む様々な問題を取りあげ、人々の意識を変えた偉大な作家です。極端な吝嗇家で人でなしのように描かれるスクルージの中に、読者は自分の心に潜む傲慢さや自分勝手のかけらを見つけることでしょう。けれど人間嫌いで自分のことしか考えていなかったスクルージが己の未来を知った時、ついに愛と安らぎを求めて心を入れ替えたことに、多くの人は安堵の思いと幸せを感じるに違いありません。200年前も今も、根本的に人は変わっていないことを感じさせてくれるこのような作品こそ「名作」と呼ばれるにふさわしいと思います。

村岡花子(1893ー1968)の翻訳は現代の翻訳者のそれと比べると、特に会話文において古風なところがあるのは事実です。けれどその言葉一つ一つの積み重ねから感じられる物語全体の雰囲気は、日常生活の延長とは異なる物語の世界にふさわしいもとのして印象付けられます(解説で英文学者の河合祥一郎さんは村岡さんの翻訳を「温かくて、詩的」「昔の日本語の上品な言いまわしがおおいところ」が特徴と書かれています)。新刊として出版されたこの機会に、改めて村岡花子訳の古典文学をじっくりと味わってお楽しみください。(か)

※こちらの書籍はディケンズの「クリスマス・キャロル」の他に、オスカー・ワイルドの「しあわせな王子さま」と、村岡さんの創作童話「さびしいクリスマス」の3編が収録されています。

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