クリーンヒット ⚾ 詩
『よかったなあ』
まど・みちお 詩
あずみ虫 絵
理論社 刊
2024年7月 発行
32ページ
2090円(税込)
対象:小学校低学年から

よかったなあーーは魔法の言葉。あたりまえのことやものが輝きだす…

『せんねん まんねん』『くうき』『水はうたいます』に続く、まどさんの詩を絵本にしたシリーズの新顔です。大き目の判型の本なので、とてもゆったりと詩と絵を楽しめます。
まどさんの詩のなかではあまり知られていないものかもしれませんが、本作も作者のやさしい眼差しを感じることができる1冊。

草や木、葉っぱ、花や動物たち。そこに「ある」ことや、「いる」ことが当たり前と思っていることやものに、いて(あって)「よかったなあ」と声をかけます。ページをめくるごとに、すべては当たり前ではないのだ、と気づきを与えてくれるのです。繰り返される「よかったなあ」の言葉がうむリズムが心地よく響きます。そして読み終えたとき「よかったなあ」と思わずつぶやいてしまう。
詩を絵本にすることのよいことのひとつに、ゆっくりと詩を味わえることがあると思います。
特にまどさんの詩はやさしい言葉で綴られているので、黙読すればほぼ一瞬で読み終えることもできてしまう。けれど絵本になっていると、詩を読むのに必然的に1冊分のページをめくる行為を伴うので、さすがに一瞬で読み終えることはできません(笑)。じっくりと向き合えるのです。
文字のないページもあるので、余韻を深められるでしょう。

絵は、日本とアラスカを行き来している画家が鮮やかに生命を描いています。わたしは見返しのページの絵に風を感じました。

まどさんのどの作品でも言えることですが、本書も生きていることの喜びを平易な幼い子でもわかる言葉でうたっています。どの子も幸せに生きてほしいとの願いでもあるのかもしれません。 (す)

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