クリーンヒット ⚾ 昔話
『むかしむかしあるところに たのしい日本のむかしばなし』
竹中淑子・根岸貴子 文
堀川理万子 絵
徳間書店 刊
2024年6月 発行
160ページ
1780円(税込)
対象:小学校低学年から

読み聞かせにふさわしく、低学年からはひとりでも読める、むかしばなし集

「ももたろう」「さるとかに」「舌きりすずめ」「カチカチ山」「花さかじい」――これらのタイトルを見て「聞いたことがない」という人は珍しいかもしれません。先にあげたようなよく知られている有名なお話に加え、ちょっと変わった昔話を合わせた13の日本の昔話の、幼い子から聞いて・読んで楽しめる選集が出版されました。日本の昔話は各地の方言と分かちがたく結びついているのですが、それがかえって現代の読者から昔話を遠ざけてしまうことにもなっています。方言が身についていない人でも構えずに昔話を読む(聞く)ためには、ある程度標準語に整えられる必要があるのかもしれません。この昔話集はそんな苦手意識を持たずに大人が子どもに昔話を読んでやれるようにという配慮から、方言を使わずに再話を試みているのが特徴です。

この昔話集を編んだ竹中淑子さんと根岸貴子さんは児童図書館員として長く子どもたちにお話を語ってきた方で、昔話が子どもを惹きつける力の大きさをご自身の体験から深く感じてこられました。娯楽の幅が広がり、お話を聞くことが唯一の楽しみであるような生活を送ってはいない我々ですが、簡潔なストーリーやそこはかとないユーモアを備えたシンプルな昔話を聞くと、心の深いところにじんわりと幸せが広がっていくように思われます。機械の音ではなく、人が発する生の声で語られるからこそ伝えられる温かみを、楽しい昔話を通して子どもたちに伝えたい――昔話を読んだり語ったりする場所には、物語に込められた知恵を手渡すだけでなく、何より人と人が共に生きることの喜びが伝えられる時が流れていくのだと、ゆかいなお話の数々に思わず声を出して笑いながら考えました。(か)

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