クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『どうして戦争しちゃいけないの? 元イスラエル兵ダニーさんのお話』
ダニー・ネフセタイ 著
あけび書房 刊
2024年3月 発行
1760円(税込)
118ページ
対象:中学生から

軍事力に「酔っぱらう」国から来たからこそ、わかること。

著者のダニー・ネフセタイさんは1957年イスラエル生まれ。現在は埼玉県の秩父で家具作家として活動する傍ら、反戦や反原発を訴える講演を全国各地で行っています。この本も昨年の10月に行われた二つの講演会を元に作られました。

ダニーさんは今でこそ「戦争は最大の人権侵害」であり「パレスチナとイスラエルに平和を」と発言をしていますが、徴兵制によって18歳で軍隊に入り3年間空軍に所属していたころは、「悪い」アラブ人をやっつけることに疑問を感じたことはありませんでした。軍隊はカッコイイと思わせる空気が社会にあり、その中で最も子どもたちが憧れる空軍のパイロットだったダニーさんに突然の「気づき」が訪れたのは、2008年のイスラエルによるガザの大攻撃でパレスチナの市民が1400人(内子どもが345人)も殺されたことがきっかけでした。なぜ罪もない子どもたちを殺してイスラエルは平気なのか――と。今では自らの経験と国の外からの冷静な目で「戦争によらない解決の道がある」こと、戦争は紛れもない悪であることを信念を持って訴えています。

現在のイスラエル軍によるガザ地区への苛烈な攻撃を見て、多くの人が「なぜ、第二次世界大戦のホロコーストを経験したユダヤ人が、パレスチナの人々に対してあのようなむごいことができるのか」と感じていることでしょう。こうした私たちが感じる疑問=イスラエルの人たちのメンタリティについて、ダニーさんは第3章のジャーナリスト・土井敏邦さんとの対談の中で非常に分かりやすい言葉で語っています。この部分はイスラエルという国を理解する上でぜひ読んでおきたいところです。そして、決して大勢ではないかもしれませんが、元イスラエル軍兵士の中には自らの加害について声を挙げている人がいるということにも、未来に対する希望が感じられます。
そして何よりダニーさんの、近年防衛費を増大させつつある日本への警告を真剣に受け止めなければならないと思いました。(か)

大人におススメ~ダニー・ネフセタイさんの著書~
国のために死ぬのはすばらしい? イスラエルからきたユダヤ人家具作家の平和論』高文研/1650円(税込)
イスラエル軍元兵士が語る非戦論』集英社新書/1100円(税込)

★ご注文はお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メール narnia@kyobunkwan.co.jp