クリーンヒット ⚾ フィクション
『しじんのゆうびんやさん』
斉藤倫 作
牡丹靖佳 画
偕成社 刊
2024年11月 発行
1760円(税込)
130ページ
対象:小学校高学年から

詩って、なんだろう? ーーその輪郭をやわらかに描き出す、詩人が書く「しじん」の物語。

ちいさな街のちいさな郵便局で働く、窓口担当のガイトーと配達担当のトリノス。
ある日、作業中にトリノスから灯台守のじいさんが一度もてがみをもらったことがないということを聞いたガイトーは、てがみを書いてみることにしました。見ず知らずのじいさんに何を書くのかーー「それでもまあ」「やってみようとおもうんだ」と言ったガイトーは、その翌日「とうだいもりさまへ」と書いたてがみをトリノスへ託します。
受け取った灯台守のじいさんは、すぐに封を開いて読みました。そして「これは、詩、って、もんだよ」と言いました。

見ず知らずの人のことを思い、書き綴ったことばは、当人も思ってもみなかったある種の真実にたどりつく。詩とは何かが、物語を通して描かれているともいえます。
とはいえ、小難しいことは脇に置いて純粋に楽しんでほしいです。
著者は詩人でもあり、本領発揮! の1冊。『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)や『ポエトリー・ドッグス』(講談社)のように物語のなかで詩を紹介している著書がありますが、その流れにある作品です。前作と違うのは、物語のなかに出てくる詩が自作である、ということ。前作よりさらに詩と物語の親和性が高くなっていて、読みながらぐんぐん惹かれていきました。
本書の詩だけを集めて、詩集にしてほしいくらい(笑)。

造本も美しく、奥付に「装丁:名久井直子」とあって、深く納得したのでした。 (す)

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