クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『ルビーの一歩 私たちすべての問題』
ルビー・ブリッジズ 著
千葉茂樹 訳
あすなろ書房 刊
2024年1月30日 発行
1430円(税込)
63ページ
対象:中学生から

勇気をだして、全米初となる歴史的第一歩をふみだした6歳の少女からの「平和の手紙」。

アメリカの公民権運動家ルビー・ブリジズ。彼女は1960年6歳のとき、ニューオリンズの白人専用のウィリアム・フランツ小学校にはじめての黒人生徒として入学しました。彼女がほかの子どもと違うのは、肌の色だけ。そのときルビーは、このことが歴史の教科書にのるようなこととは全くわかっていませんでした。

1年生のあいだ、ずっと学校の行き帰りには4人(!)の連邦保安官が護衛についていたそうです。多くの人が身の安全を心配したので、大統領が指示をだしたのだとか。当時の写真とともに淡々と綴られる状況は、どれも知らないことばかりでした。写真のなかには、学校に来たルビーに対して抗議する一般人の様子があったりもします。ちょっと怖い、と思いました。何が人をそんな風にさせるのか? 今もなくならない人種差別という偏見について、向き合っていかないといけない。目をそむけちゃだめだということを改めて感じた1冊です。

表紙のイラストは、アメリカを代表する画家のひとり、ノーマン・ロックウェルの『私たちすべての問題』の一部とのこと。「NIGGER」や「KKK」の落書きがある壁の前を保安官に護衛されながら、まっすぐ前をむくルビーの姿が描かれた人種差別を批判した作品。ロックウェルがこんな社会派の絵を描いていたとはまったく知りませんでした。昔、ロックウェルの絵は好きでいろいろ見ていたけど。絵の見方が変わる気がします。

いろいろと考えさせれる1冊でとてもよかったのですが、社会背景とか歴史などの解説のページがちゃんとあってもよかったな、と思います。ロックウェルの絵についても詳しい説明がほしいです。訳者あとがきで少し触れられているだけなので、わかりにくいです。そのあたりが、ちょっと残念でした。でも、写真を見てキャプションを読むだけでも伝わる何かがあると思うので、まずは多くの人に手にしてほしいです。 (す)

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