クリーンヒット⚾フィクション
『透明なルール』
佐藤いつ子 著
KADOKAWA 刊
2024年4月 発行
1650円(税込)
219ページ
対象:中学生以上

わたしたちは、目に見えない透明なルールにしばられている

主人公の佐々木優希は、椿中に通う中学生。優希が2年生に進級した新学期、椿中にある変化が起きた。ブラック校則が廃止されたのだ。これまでの椿中は校則が厳しく、髪の毛が肩につく場合は二つに結わえなければいけない、ソックスは白でなければいけないなど、厳格な決まりがあった。 ブラック校則が廃止されてから迎えた始業式 、優希は白いソックスではなく紺色のソックスを履きたい気持ちを抑え、友人としめし合わせて白のソックスを履いた。先輩の目を気にしたことに加え、浮いてしまうのではないかという怖さからの行動であった。実際、白のソックスを履く人ばかりで、髪型も今まで通りという結果に。理不尽な校則が廃止されたにもかかわらず、生徒たちは、同調圧力など、目に見えない「透明なルール」に縛られ、自由に振舞えないでいた。 「透明なルール」のなかには「自分が自分に作ってしまうルール」も存在する。例えば「意見を言ったら、嫌われるんじゃないか」と、みんなの反応を勝手に決めつけることも、そのひとつである。

優希のように、同調圧力を感じる生徒がいる一方で、周りとは違う行動をとる生徒もいた。優希の同級生である、荻野誠だ。誠は、スニーカーではなくローファーを履いていたことから注目を浴びていたため、優希は「あえて目立つようなこと、しない方がいいかもよ。いじられちゃうよ」と忠告をする。優希の言葉に対する誠の答えとは……。ルールに縛られない、誠の言葉はシンプルながらも、核心をついていた。

本作は、目に見えない「透明なルール」に縛られる優希が、多様な同級生と交わるなかで、次第に考えを変化させる物語。新学期に行われるクラス替えサバイバルで「ボッチ」にならないか心配をする場面や、SNSとの向き合い方は、特に同世代の学生に響くものがあるのでは。この1冊を語るうえで欠かせない存在であり、キーパーソンの米倉愛にも注目を。 「透明なルール」に支配されていないか、自らの心に問いかけたい。(み)

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