クリーンヒット⚾ノンフィクション
『縄文時代を解き明かす 考古学の新たな挑戦』
阿部芳郎 編著
岩波書店 刊
2024年3月 発行
1034円(税込)
209ページ
対象:高校生以上

探偵のようなおもしろさがある、縄文時代の考古学

縄文文化は、長い間継続した狩猟採集社会として、世界的に見ても極めて稀な文化です。
本書は、今から1万6500年前に日本列島に独自に展開した縄文時代の生活の実態を明らかにするため、4人の研究者が最新の研究結果を紹介した1冊です。
縄文時代は、文字のない狩猟採集社会。研究をするには、遺跡に残された「モノやコト」を丹念につなぎ合わせて考える必要があります。そこで「縄文時代とはどのような時代だったのか」という共通のテーマをもって研究を続ける研究者たちが、複数の学問の境界を超え、考古学という学問の大切さやおもしろさも伝えてくれます。

考古学は、縄文時代を、人体、食べた物や調理に使った土器、土偶という祈りの道具から考えたりと、多様な視点からとらえることができます。遺跡、土器、石器などの道具や当時の社会の研究を組み合わせて、さまざまな現象の因果関係を読み解いてゆくのも魅力のひとつです。

興味深かった ある事実があります。それは、遺跡から発掘される大半の縄文土器には煮炊きの時に付着した煤(すす)や、加熱によって内容物が焦げた「オコゲ」がついている場合が多いということ。博物館の立派なケースに収められている重要文化財や国宝の縄文土器も、多くは煮炊き用の道具として使われたことを知り、縄文時代を身近に感じました。

縄文時代について知を深めたい方はもちろんのこと、考古学の世界が気になるという学生にも読んでほしいです。巻末には、4人の研究者による「なぜ研究者になったのか」が記されているので、参考にしてくださいね。この1冊を通して、新たな進路の道が切り開かれるかもしれませんよ。(み)

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