クリーンヒット⚾ノンフィクション
『サッカー・グラニーズ ボールを蹴って人生を切りひらいた南アフリカのおばあちゃんたちの物語
ジーン・ダフィー 著
実川元子 訳
平凡社 刊
2024年9月 発行
定価3520円(税込)
341ページ
対象:中学生以上

南アフリカで起きた真実の物語

南アフリカで起きた真実の物語を執筆したのは、子どもたちの試合をラインの外側から応援するサッカー・ママでは飽き足らず、自らもサッカーチームに所属し、ボールを蹴る50代の女性。あるとき、1本の動画が、南アフリカから1万2670キロ離れたアメリカの都市郊外に暮らす、著者の心をとらえます。 それは、黒人のおばあちゃんたちがサッカーを楽しむ映像でした。南アフリカの片田舎にあるサッカーチームに所属する女性たちは、親しみをこめて「サッカー・グラニーズ(サッカーおばあちゃんたち)」と呼ばれていて、チームの正式名称は「バケイグラ・バケイグラ・フットボールクラブ」(地元の言語、ツォンガ語で「おばあちゃん・おばあちゃん」の意味)。チームには、40代後半から80代前半までの35人が所属しています。

サッカー・グラニーズの創設者は、レベッカ・”ベカ”・ンツァンウィジ(愛称 ママ・ベカ)。彼女は「貧しさに苦しむ人々の生活向上に全身全霊をかけて貢献し、コミュニティの発展を支えていく人たちのロールモデルであること」から、南アフリカで民間人に与えられる最高の栄誉賞である「バオバブ騎士団」の称号を授与されました。ママ・ベカの業績のなかでも、もっとも広く知られ、称賛を受けているのがサッカー・グラニーズの活動で「50代から80代の女性たちが元気で健康的な毎日を送れること」を願い、サッカーを広める活動を続けています。 サッカーが高齢者を救うと思い至った背景には、ママ・ベカを苦しめた病の存在があり、病院に通う日々のなか「体力」の必要性を強く感じ、高齢女性たちを運動に誘い始めたのが、のちにサッカーチームを創設する起点となりました。

実際、サッカーをすることで女性たちのからだはよく動くようになり、体力がつきました。効果はてきめんだったのです。身体機能の向上だけでなく、チームの活動を通して女性たちはよく笑うようになり、互いに友情を育むことで精神面の安定が得られ、差別や貧困、暴力や病気に悩まされる多くの高齢女性たちを救いました。
ベカには、老いて認知症になったり、精神的に病んだ高齢女性が魔女だと決めつけられて、首にタイヤをぶら下げられ、生きたまま焼かれた光景を目の当たりにした過去があります。からだを動かすことは、認知症の予防にもなるのです。

本書では「アパルトヘイトが奪った居住と自由」や貧富の格差について、さらにはHIV/エイズ、レイプ、DVの問題についても取り上げられていて、差別に苦しんだ女性たちの言葉にふれると、胸がしめつけられます。しかし、サッカーが多くの人を救い出したように、何かのきっかけが、人生を一変させることがあるという事実には、希望を抱くことができます。
過去を変えることはできなくても、未来は、変えることができるはずーーあなたも、まずは1ページ、開いてみてください。それが、誰かを救うはじめの一歩になることでしょう。(み)

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