クリーンヒット⚾ フィクション
『ふしぎなメリーゴーラウンド』
リーザ=マリー・ブルーム 作
はたさわゆうこ 訳
こやまこいこ 絵
徳間書店 刊
2022年8月 発行
160ページ
対象:小学校中学年から

ほんものになれればいいのにな……

40年間、手づくりのメリーゴーラウンドと旅をしてきたおじいさんが年を取って引退することになり、木彫りの動物のついたこのメリーゴーラウンドを手放すことにしました。おじいさんは新しい持ち主のポメランツォ夫妻に「毎晩、木の動物たちにえさをやるように」と頼んでいきます。実はこのメリーゴーラウンドには秘密があって、夜の30分間だけほんものの動物になるのです。そんなこととは知らないポメランツォは、おじいさんとの約束を守るどころかお金儲けのことしか考えず、メリーゴーラウンドを回すのも10回から7回に減らす始末、動物たちをかわいがるどころではありません。そんなある日、大きな茶色の馬の引くトレーラーが移動遊園地にやってきて、レーナという女の子がメリーゴーラウンドの子馬と出会いました……。

茶色い子馬、バラ色の子ブタ、しましまのトラ、灰色のロバ、白いハクチョウ、小さなヒツジーー木彫りの動物たちが願っていたのは、子どもたちを喜ばせることと同じくらい、持ち主や子どもたちから愛されることでした。その子どもたちが、動物たちに愛を込めて優しく語りかけ抱きしめた時、魔法が起こったのです。物語に意外性はありませんが、先が見えるからこそ安心したワクワク感が味わえます。すべての動物たちが幸せをつかんだことは、読者にこの上ない満足を与えてくれることでしょう。ラストにはさらなる嬉しい驚きが用意されていて、子どもたちが「あぁ、よかった!」の思いと共にページを閉じることは間違いありません。(か)
※読み聞かせなら小学校低学年からでも楽しめます!

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