東京子ども図書館の「レクチャーブックス◆松岡享子の本」シリーズ最新刊が出ました。第3巻目となる本書は『読者としての子ども』というタイトルで、かつて機関誌の「こどもとしょかん」に掲載された松岡さんの講演録が再録されています。
タイトルになっている「読者としての子ども」は2014年に広島で行われた講演会で「こどもとしょかん145号/2015年春号」に掲載されたもの、2つ目の「ことばの力」は2015年に東北大学で行われた講演会で「こどもとしょかん168号/2021年冬号」に掲載されたもの、3つ目の「よい読者を育てる」は2015年に新潟で行われた講演の音声記録を今回特別に編集部でまとめられた初の文字記録です。
松岡先生は2015年出版の岩波新書『子どもと本』において、そこまでに経験されたことや考えてこられたことをすべて注ぎ込んでまとめられているため、本書は折に触れて立ち返るべき先生からの大切なメッセージとして特別な位置にいます。それでも今回講演録を読むことで、松岡先生が「読書」(とりわけ“子どもの”読書)についてとても幅広い視点で考えを巡らせていらしたことがわかって、改めて心を打たれました。周りを見回せば子どもの読む力を弱めている様々な社会的要因に気づきますが、弱くなっているのは果たして子どもだけでしょうか。お話を語ったり、子どもに本を紹介する側の大人も、自分自身の体験に基づいた想像力や発信する力が弱まっていないだろうか――そんなことをふと思いました。子どもは大人や社会の状態を映し出している鏡です。子どもの読書について嘆くばかりではなく(嘆かわしい状況も大人が作り出していることが多い!)、まずは自分ができることを精一杯やってみないとと、松岡先生の声が聞こえてくるようなこの講演録を読んで感じました。
【新刊】『読者としての子ども』松岡享子 著/東京子ども図書館 1540円(税込)
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