歴史に埋もれた人々の物語をすくいあげる“歴史フィクション”の書き手として、いくつもの優れた作品を世に送り出しているアメリカの作家ルータ・セペティス。昨年9月に刊行された『モノクロの街の夜明けに』は、1989年のルーマニア独裁下で生きる若者の姿を描き出し、多くの読者の共感を得ました。彼女の邦訳作品としては2冊目で2017年に出版された『凍てつく海のむこうに』は、第2次世界大戦末期の東プロイセン沖で起こった海運史上最大の惨事とも呼ばれるヴィルヘルム・グストロフ号の沈没を描いた作品で、本書で初めてこの悲劇を知った方も多くいらしたことと思います。敗戦の色が濃くなった1945年1月、ソ連軍の侵攻から逃れようとした1万人以上の避難民(その半数は子ども)が、真冬のバルト海で船と共に海に沈んだという衝撃的な事実に打ちのめされた記憶も生々しいのですが、残念なことにこの本が出版社で在庫僅少、まもなく品切れとなることが決まったそうです……。
登場人物はあくまで作者の創作ではありますが、だからこそ彼らが抱える様々な秘密も、この船に乗るために払った犠牲も、そしてその結末も、すべてが戦争がもたらした悲劇であり、戦争が実に愚かな行為であることを鋭く読者に突き付けてきます。世界で戦争が終わらない中、今こそこの本が読まれるべきと思うのですが、そのタイミングで品切れ重版未定とは本当に残念でなりません。ナルニア国ではまだこの本に出合っていない方に、ぜひ最後のチャンスとなるこの機会に読んでほしいという思いを込めてレジ前でご紹介しています。

 →箱入りハードカバー本2点(写真右)も完売近し💦

在庫は15冊限りです。読書で世の中は変えられないけれど、私個人の内面には大きな変化をもたらすことができます。日々の戦争報道に慣れてしまわないように、犠牲者は数ではなく、かけがえのない個人の死を意味するのだということを心に留めるためにも、今につながるこの物語が一人でも多くの方の手に渡ることを願います。

凍てつく海のむこうに』ルータ・セペティス作/野沢佳織 訳/岩波書店 2310円(税込) ※2017年カーネギー賞受賞作

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