連日ニュースで流れてくるパレスチナのガザの様子に、苦しくやりきれない思いをしている方も多いことと思います。毎日報告される死者の数を聞くとこれほど多くの命が日々失われていることに呆然とするばかりです。自分には何ができるのかまったく分かりませんが、ただ憎しみの渦に巻き込まれてはいけないという思いはつのります。何もできないけれど、せめて今起こっているこの現実を心から締め出すことだけはするまいと思う日々です。
当事者ではないからこそ、冷静に物事を見て考えることができるーーそれだけが、今の私の強みです。皆さんに今だからこそ読んで欲しい本をご紹介します。

2019年に出版されたヴァレリー・ゼナッティの『瓶に入れた手紙』(文研出版/1650円)は、以前ナルニア国のきになる新刊でもご紹介したことがあります。イスラエルの少女がパレスチナの少年と手紙(のちにメール)を交換するうちに、それぞれが抱える複雑な思いを乗り越えていく物語には、人と人が1対1で向き合うときに初めて憎しみを超えた共感が芽生えるのだという希望が感じられました。現実は物語のようにはいかないかもしれませんが、まずは顔の見えない相手にステレオタイプのレッテルをはることを止め、向かい合うことから始めたいと感じる作品です。
そして、戦争で憎しみ合いばらばらになってしまった民族がふたたび隣人となることを描いた『平和の種をまく ボスニアの少女エミナ』(大塚敦子 写真・文/岩崎書店/1650円)も、この戦争ののちを見据えた希望としてぜひ読んでいただきたい素晴らしい写真絵本です。

パレスチナのガザについて、私たちはどれほどのことを知っているでしょう。子どもたちに尋ねられた時に、答えられる言葉を持っているでしょうか。『ガザ 戦争しか知らないこどもたち』(清田明宏 著/ポプラ社/1650円)は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)で働いた医師・清田明宏氏が2014年の戦争後にガザを訪れた時の記録です。そこで何が起こったか(それは今も起こっていること)を、今からでも知ることは大切。これは子ども向けの写真絵本ですが、大人の方には同著者の『天井のない監獄 ガザの声を聴け!』(集英社新書)もぜひお手に取っていただきたいと思います。

物語には物事を客観的にみる一方で心を動かす力があります。主人公に自分を重ねてその体験を自分事にできれば、現実の出来事に対しても想像力を広げる力となるはずです。エリザベス・レアードの『戦場のオレンジ』(評論社/1430円)は、レバノン内戦で破壊されたベイルートの町で、病に倒れた祖母のために危険を冒した少女の物語です。作者はパレスチナが舞台の『ぼくたちの砦』などの作品も書いています。

そして、理不尽な戦争が起こるたびに何度も読み返すのが『なぜ戦争はよくないか』(偕成社/1320円)。著者のアリス・ウォーカーは常に弱い者の立場に立って発言をしてきた作家で、戦争(とそれを起こそうとする人)に対する強い憤りをこの絵本に込めています。どんな大義名分があっても戦争を正当化することはできないーーそのことだけははっきりと感じられるはずです。

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