ベスト 👍 詩
『詩集 星の時』
『詩集 水の時』
寮美千子 作
ロクリン社 刊
2025年3月30日 発行
各2750円(税込)
各193ページ
対象:中学生から
詩は声となり、音楽や自然音と共に宇宙から降りそそいだーー寮さんが、こんな詩を書いていたなんて知りませんでした!
寮さんといえば、奈良少年刑務所での授業の成果を編纂した『空が青いから白をえらんだのです』の著書が昨今では有名かもしれません。個人的なことになるけれど、わたしにとっては『小惑星美術館』『ラジオスターレストラン』『ノスタルギガンテス』の作者としての存在が大きい。イメージの豊かな物語でした(いずれも現在品切れ――残念!)。
本書の詩は、その『小惑星美術館』を読んだ沢木耕太郎さん(!)が無名だった寮さんに依頼したものだそう。
1991年に開局した衛星放送ラジオ局「セント・ギガ」。赤道上空3万6千キロの放送衛星から、24時間途切れなく発信された音楽と自然音の「音の潮流」でした。番組は日の出から日の入りまでの「水の時」と、日の入りから日の出までの「星の時」の2つのみ! 時報もコマーシャルもDJのおしゃべりもなし。人の声が流れるのは、日の出・日の入り、月の満ち欠け、潮の満ち引きの告知と「ヴォイス」と呼ばれる「詩」の言葉のみだったそう。全然、このラジオ局の存在を知りませんでした! 知っていたら聞いてみたかったなあ(聞いたことのある方、いらっしゃいますか?)。
寮さんはこの「ヴォイス」の書き手として1997年まで600篇以上の詩を提供していました。その中から『星の時』に117篇、『水の時』に124篇の詩を収めています。初の活字化!
「星の時」では「Star Odyssey=星や心の宇宙についての言葉」が、「水の時」では「Water Odyssey=地球の自然に関する言葉」が語られました。
この本の成り立ちを説明するのが難しい! (笑) 詳しくはそれぞれのあとがきを読んでみてください。 でも、こんな事情は抜きにしても、ぜひ手に取ってほしい詩集。
ゆったりした心地に浸れます。そして想像力を刺激されること、間違いなしです。
最初に依頼を受けて書いた詩も収録されています。それが「音楽が降りてくる」と「Harmonium Fantasia」。
ラジオのために書かれているので、思わず音読したくなる言葉たちです。自分の声であっても耳から入ってくる言葉が心にしみます。造本も美しくて、手元に置きたくなる1冊です。 (す)
「音楽が降りてくる」
音楽が降りてくる
空から 星から
音楽が流れる
川のように 絶え間なく
天の河の 透明で希薄な水が
地上に 流れ込む
水晶の水に浸されて 洗い流される地上の塵
都市は 美しい廃墟になる
潮の満ち引きのリズムを
ゆっくりと 思い出しながら
時が ゆるやかに 流れだす
わたしたちは いままで
なにをそんなに 急いでいたのだろう
体のなかの海が 静かに満ちてくる
水平線から 月が現われる
音楽が打ち寄せる
わたしのなかの 海から
そして 遥かな星から
星のしぶきをあげて 砕ける波
わたしは じっと 耳を澄まし
小さな 渚になる
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