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『台湾の少年3 戒厳令下の編集者』
『台湾の少年4 民主化の時代へ』
游珮芸、周見信 作
倉本知明 訳
岩波書店 刊
3:2022年10月13日 発行
4:2023年1月24日 発行
定価各2640円(税込)
3:183ページ、4:173ページ
対象:高校生から

戒厳令下の時代、民主化を経て現代まで。白色テロの傷を負いつつ生き抜いた蔡焜霖(さいこんりん)の人生を丹念にたどる!

2022年7月に1,2巻が刊行された『台湾の少年』の続刊。
3巻では釈放された蔡焜霖が、幼馴染の「きみこ」と再会し、結婚します。就職に苦労するも、漫画雑誌の編集者となり、その後出版社を立ち上げ、児童雑誌「王子」を創刊に携わりました。
4巻では、二度の水害にあい雑誌社は破産宣告し、大企業に新たな活躍の場を得たところから始まります。

1,2巻同様、知らない固有名詞のオンパレードで、頭の中は終始「?????」がめぐっていました。
しかし、わけのわからないなりにおもしろく、読ませる力の強い作品でした。グラフィックノベル(漫画)の形態をとっているせいもあるかもしれません。
それでも3巻は、編集者の仕事ぶりだったり、わりと想像できる事柄も多く、読み進められました。唯一、知っている固有名詞が出てきた巻です。

年表や「さらに物語を読み込むために」と題した解説のページも充実しており、本編だけでなく、すみずみまで読み込んでほしい1冊。丁寧な本作りを感じます。
随所に日本語の歌が出てきて、心情をよく表現していてよかったです。日本語以外の歌もたくさんでてきます。歌がでてくるのは、この本の特徴的な部分かもしれない。

印象深いことは多くありましたが、特に衝撃を受けたのは4巻の挟み込みの鈴木賢氏による解説です。最後の方に“「台湾人は親日」は本当か”という文章。台湾は親日的な国だと言説が語られるが、本当に恨まれていないのか、というのです。台湾の歴史を知らぬまま、わたしもこの言説を信じて疑ったことはありませんでした。が、この解説を読み、そのことを恥ずかしく思いました。
日本統治時代の出来事を記憶している人が少なくなり、この時代の嫌なことを語り継ぐ暇がなかっただけ。悪い思い出はどんどん薄らいでいっただけ、というのです。確かに言われてみれば、その通りかも。傲慢で無礼なこと! このことを感じることができただけでも、読んでよかったと思います。

この「台湾の少年」を手掛かりに、台湾と日本の歴史について、少しづつでも学んでいかなければなりませんね。本書で白色テロ、ということも初めて知りました。
世界にはまだまだらないことがたくさん! 読書は時代も世界も超えるーー改めて実感した時間でした。  (す)

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