ベスト👍 フィクション
『博物館の少女 騒がしい幽霊』
富安陽子 著
偕成社 刊
2023年9月 発行
定価1540円(税込)
365ページ
対象:小学校高学年から
陸軍卿屋敷で相次ぐ怪しい現象。イカルは事態究明の依頼を受け、屋敷へ家庭教師として赴く!
お待たせしました! 2021年12月に1巻目が出てから1年半の月日が過ぎ、2巻目の登場です。文明開化まもない上野を舞台にした、ミステリ仕立ての1作目は作者の新境地ともいえるものでした。続く本作は、さらに筆に磨きをかけた出来栄えと言えるでしょう。
その見識を見初められた主人公イカルは博物館の怪異研究所で働いていました。ある時、突然の指名で陸軍卿・大山巌とその婚約者、山川捨松の博物館観覧に同伴します。その時、捨松の身の上を聞いたイカルは彼女の聡明さと人柄に惹かれます。でも彼らの出身地が薩摩と会津であることを根拠にあらぬ噂が立てられていることに憤慨します。そんなある日、捨松の兄が怪異研究所にやってきました。捨松と巌の結婚後、屋敷内で怪異現象が発生していて、調査してほしいというのです。
そこで所長のトノサマは屋敷の様子を探るため、巌の子どもの教育係としてイカルを大山邸に送り込みました…。
歴史上の人物、捨松がとにかくかっこよく描かれていて、イカルと同じ目線で(!)とても惹かれます。イカルの先生っぷりもおもしろいです。そして謎めいた少年アキラとの淡い恋模様の行く末も気になります。
富安さんの作品で「恋」の要素があるものって珍しいと思います。
前作よりさらにミステリ感が増していて、物語としての構成が見事というほかありません。子どもの読者はもちろんですが、子どもの本に興味ない大人にもぜひ、読んでほしいです。
北上次郎さん(目黒孝二さん)が生きていらしたら、きっと書評を書いてくれたに違いないって思いました。
読み終わると表紙のイカルが人力車に乗っているイラストの意味がわかるのも◎。
歴史が好きな人、ミステリが好きな人、とにかくわくわくした本が読みたい人、必読です! (す)
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