ベスト👍 ノンフィクション
『ミライの源氏物語』
山崎ナオコーラ 著
淡交社 刊
2023年3月13日 発行
定価1760円(税込)
183ページ
対象:高校生から

違和感をときほぐす現代人のための「源氏物語」

「第33回Bunkamura ドゥマゴ文学賞受賞作」というX(旧Twitter)を見て、本書の存在を知りました。遅まきながら…というところですが、あまりにもおもしろくて一気読みしました!
著者、独特の物語の読みときが「なるほど!」とストンと落ちる感覚で読めたのです。ある意味、とっても現代的とでも言えるかもしれません。

目次を拾うと「今、読みにくさをどうやって超えるか」「ルッキズムーー末摘花」「ロリコンーー紫の上」「マザコンーー桐壷更衣と藤壷」「ホモソーシャルーー雨夜の品定め」「貧困問題ーー夕顔」「マウンティングーー六条御息所と葵の上」「トロフィーワイフーー女三宮」「性暴力ーー女三宮など」等々、といった具合です。目次の項目だけでも興味深いでしょ?
古典を「今」読むことの意味、とでもいうか「そんな昔の本を読んでもおもしろくない」といった声に「そんなことはない」と明快な答えを提示したかんじ。
現代の感覚からすれば、倫理観や社会規範が平安時代とは大きく異なるので、疑問を感じる部分も多い「源氏物語」のモヤモヤを解消してくれる。
部分的に著者による現代語訳もあり、読みやすいです(著者紹介にあったけど、いつかナオコーラ訳で全編読みたい!)。

否定的に捉えているように感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。著者は大学の卒論で「源氏物語」をテーマにしていたそうで、「源氏」への深い愛も感じます。
様々な理由で「源氏」から疎遠になっている人にこそ、手にしてみてほしい1冊です。
気になった1章だけでも、まずは! 読んでみてください。高校の授業の導入に使ってもおもしろいかもしれません。 (す)

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