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『ナマケモノは、なぜ怠けるのか?』
稲垣栄洋 著
筑摩書房 刊
2023年5月 発行
定価858円(税込)
174ページ
対象:中学生から

あなたは、あなたでいいんだよ。そして、あなたのままがいいんだよ

38億年の歴史の中で、さまざまな進化を遂げてきた生き物。 本書は、著者である稲垣栄洋さんによって、”一見”つまらないと思える生き物にスポットライトを当て、今、目の前に存在する生き物たちが進化の最先端であること、ほかにない輝かしい個性をもつことを証明していく1冊です。 さらに、同じ生き物であるヒトについても思考し、生物は多様性を求めてばらつきたがるのに、なぜ人間は均一やスピードを求め、人と比較してしまうのかなど、その理由も探ります。

「にぶい生き物」として紹介されたのは、スローロリス。スローロリスは、その名の通り、動きがスローなサルの仲間です。エサとなるのは動き回る昆虫。相当なスピードでつかまえなくてはなりませんが、すばやく動くことはできません。 そこで、スローロリスが考えた戦略は何でしょう? 答えは、「動きが見えないくらいスピードを遅くする」こと。 つまり、スピードに対抗する強力な手段は「のろさ」であり、この逆転の発想がスローロリスの武器なのです。

著者は、スローロリスについてこう記しています。「何でも速ければいいというものではない。スピードを競えばいいというわけではない。だからね、動きのスローなスローロリスも、そのままでいいんだよ」と。
「そのままでいいんだよ」という言葉は、生き物を紹介した文末すべてに記されていて、ここに本書の素晴らしさがあると感じました。

スローロリスにとって、動きの遅さが武器となるように、だれもがみな、その人にしかないオリジナルの個性を持っています。「自分は自分のままでいいんだ」と、強く思える、そして、”一見”つまらないとされる生き物たちをも愛おしく思える、そんな1冊です。 タイトルにある、『ナマケモノは、なぜ怠けるのか?』ーー。その答えは、ぜひ本書でお確かめください。

「何があっても、何を言われたとしても、自分がどんなに嫌いでも、あなたはあなたでいいんだよ。そして、あなたのままがいいんだよ。」(168ページより)

(み)

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