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『それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること』
安田菜津紀 著
金井真紀 絵・文
ヘウレーカ 刊
2024年4月 発行
1980円(税込)
183ページ
対象:中学生から

知ってほしい。私たちと共に生きている人たちの「あたりまえの権利」が守られていない現実を。

日本には今、300万人以上の外国籍や、外国にルーツを持つ人が暮らしています。日本で暮らす外国人は、仕事や勉強、その他様々な理由で日本にやってきて、言葉や習慣の壁を乗り越えながら私たちの隣人として暮らしているのですが、そこには日本国籍を持つ人とは全く異なる困難があることを知ってほしいという思いで書かれたのがこの本です。

外国人が日本で暮らすためには国からの許可(在留資格)が必要です。この許可がもらえないと仕事をすることができませんし、様々な社会保障を受けることもできません。それどころか国籍のある国に帰らなければならなくなってしまいます。けれど、みなそれぞれに個々の事情があり、帰れと言われても帰れない人たちもいるのです。その代表が「難民」と呼ばれる国籍国で迫害を受け、命の危険がある人たちですが、私たちの国はこのような人たちをどう扱っているのでしょうか。
著者の安田菜津紀さんはフォトジャーナリストで、東南アジア・中東・アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材などを行っています。安田さんはこの本の中で、両親がガーナからやってきて日本で生まれたリアナさん、日本の子どもたちに英語を教えたいとスリランカからやって来たウィシュマさん、“国を持たない最大の民族”と言われ、母国トルコでの迫害をのがれてやって来たクルド人のアハメットさん、戦前から日本で暮らし国の政策によって翻弄され続けた在日コリアンの石日分(ソクイルブン)さんの4人を紹介しました。それぞれの人生の道は違えど、彼らが日本で受けた(そして今も受け続けている)不当な扱いに対して、一人の日本人として憤りと恥ずかしさを感じないではいられませんでした。
国には外国人を管理・監視するための機関=出入国在留管理庁(通称:入管)があります。人々の生死にも重大な影響を及ぼす入管の問題点は、日本国籍を持ち外国の人と接点を持たない一般人には縁遠い話に思えるかもしれません。けれど、リアナさん、ウィシュマさん、アハメットさん、石さんなど顔の見える個人とその制度や法律が結びついた時、それがいかに個人の尊厳を傷つけるものかがはっきりと理解されます。「外国人だから守られなくていいもの」などなく、同じ国に暮らす隣人として「私にあって彼らにないことは間違っている」という認識の上に、入管のこと、6月に成立した「改正」入管法のこと、日本における難民の保護についてなど、自分なりにこの問題を見続けていきたいと思いました。(か)

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