ベスト👍 ノンフィクション
『ISSUE 中川李枝子 冒険のはじまり』
齋藤亜紀・土谷みずき 編
スイッチ・パブリッシング 刊
2024年4月 発行
2200円(税込)
127ページ
対象:大人
すべての子どもたちに、そして子どもだったあなたに、この特集を送ります。
日本に生まれた子どもたちで、この作品に出合っていない子はいないのではないか――そう思えるくらい、あらゆる世代の人たちに愛されている絵本『ぐりとぐら』の作者・中川李枝子さんの特集が組まれました。本書では同人誌「麦」に発表されたデビュー前の作品「青空が見えるまで」や、同人誌「いたどり」に掲載された「いやいやえん」の復刻のなどが収録され、資料的価値も高いものになっています。
同い年(1935年生まれ)の詩人・工藤直子さんとの対談ではお互いの少女時代の思い出や家族のこと、戦争の記憶などが語られます。大好きな本との出合いは父の本棚だったこと(「中川李枝子の本棚」)、インタビューではみどり保育園での子どもとの関わりや、石井桃子さんとの出会いについても触れられ、様々な出会いを通して作家・中川李枝子が成長していったことが見えてきます。とりわけ本書の特徴といえるのが、パートナーである美術家・中川宗弥氏の仕事について多くのページが割かれていることです。「中川宗弥は中川李枝子の最大の理解者であった。装丁や挿絵、時に編集者として中川李枝子の作品作りの影には たえず中川宗弥がいた。(92ページ)」ということが、『絵本と私』(福音館書店)の分析やご本人へのインタビュー、また李枝子さんと息子・画太さんのお話を通して示されます。宗弥さんの創作にかける妥協のない姿勢は真の芸術家であり、李枝子さん(文章の人)とは異なる感性をお持ちだったことがはっきりと理解できましたし、一方で李枝子さんと山脇百合子さんの姉妹コンビの作品が、なぜあれほどまでに分かちがたく物語と絵が一体となれたのかという理由も納得がいきました。
李枝子さんの様々な言葉に耳を傾けるていると、どんな時でも前(だけ)を向いて歩んでこられたこと—―それはまるで幼い子どものようです—―がうかがえます(実際ご本人もそのように言っておられます)。この太陽を向いて咲くひまわりのような真直ぐさが、何十年経っても変わらず幼い子どもたちの心を引き付けてやまない作品を生み出した“中川李枝子”という稀有な存在の本質なのではないでしょうか。(か)
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