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『カメラにうつらなかった真実 3人の写真家が見た日系人収容所』
エリザベス・パートリッジ 文
ローレン・タマキ 絵
松波佐知子 訳
徳間書店 刊
2022年12月 発行
定価3,850円(税込)
126ページ
対象:中学生以上

3人の写真家は、なにを撮り、なにを撮らなかったのか?

第二次世界大戦中、アメリカの西海岸に住むすべての日系人が「敵勢外国人」という理由で強制収容所に送られました。これは3人の写真家がそれぞれの視点で撮影した強制収容所の写真を核にして、その当時そこで何が起こったのかを振り返るドキュメントです。
写真家の一人ドロシア・ラングは米国政府の依頼で日系人の撮影をしましたが、その根底には政府の非人道的な政策を人々に知らせなければという思いがありました。日本人写真家の宮武東洋は一家でマンザナー収容所に送られましたが、逮捕・連行される危険を犯して写真機を持ち込み、有刺鉄線の中の人々の暮らしを撮影しました。風景写真家として著名なアンセル・アダムスも収容所の写真を撮った一人でしたが、彼は「厳しい状況にも負けず、懸命に生きる日系人」の姿を好んで撮りました。同じ収容所の風景と人々を写真に収めたのに、3人の写真家の被写体に向かう姿勢はそれぞれで、そこから見えてくるものも異なっています。写真は真実を映すものと考えられていますが、「何を/どう撮るか」は撮影者の意図が強く反映されることがわかるのです。

イラストと解説が3人の写真をつなぎ、戦争中に日系人の受けた不当な差別の歴史を語り直す本書からは、負の歴史を埋もれさせまいとする著者の強い信念が感じられます。人種差別は今も克服できない社会の課題であり、形を変えて身の回りに存在している問題です。社会の分断と対立に直面している私たちには、これら自分事として過去から学ぶ姿勢が求められていると感じます。(か)

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