クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『食べものから学ぶ現代社会 ~ 私たちを動かす資本主義のカラクリ ~ 』
平賀緑 著
岩波書店 刊
2024年1月19日 発行
1034円(税込)
194ページ
対象:高校生から
グローバル化、巨大企業、金融化、技術革新を「食べもの」から読み解く
本書は、2021年に刊行された『食べものから学ぶ世界史ーー人も自然も壊さない経済とは?』に続くものです。決してやさしい内容の本ではありませんが、こうして「紹介したい!」と思わせる著者の熱意を感じる1冊。とはいえ、こうして書いているわたしも、どこまで理解しているかははなはだアヤシかったりします(笑)。
それでも、日々をくらしていくなかで「???」とどこかにひっかかる事柄の解決する緒になるかと思います。それは「はじめに」で著者が言い切っている、“よくある「経済学をわかりやすく解説した本」ではありません。”の一文に表されていますね。
まずコンビニでおにぎりを買う行為を例に挙げ、世界の政治と経済を考えます。
資本主義経済の考え方(ロジック)を、商品、大量生産・大量消費、需要と供給といった経済学的な用語や考え方を「食べもの」を通して再考する。また小麦価格の高騰を題材にして、食べものと政治経済的な変遷を語っている。ーーどれも比較的身近な話題から論が始まるので机上のものになっておらず、語句が難しいながらもゆっくり読み進めていけば、ぼんやりとでも納得がいく。経済の用語が身近ではないわたしには結構難しいのですが、他人にイチから説明するのはムリだけど「わが意を得たり」の心地にはなれます。
ここ数年巷で話題になっている斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』の論旨に通ずるものがあると思いました。
なかでも「需要と供給」の解説や、米国で最大の農地所有者はビル・ゲイツだという記述(だからって、ビル・ゲイツが農業を始めているわけではない!)とか、驚きのことがらばかりでした。学校の授業やテレビや新聞などのニュースで言われていることに疑問を持たざるをえないなあ。
これからを生きる若い人たちに、この資本主義の不思議なカラクリを見破って、力をつけて生き抜いてほしいものです。
語句はやさしくないけれど、文章はとても読みやすいので、臆することなく手にしてみてください。世の中(権力)への怒りがわくとともに、元気ももらえるはずです。 (す)
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