クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『能力で人を分けなくなる日 いのちと価値のあいだ』(シリーズあいだで考える)
最首悟 著
創元社 刊
2024年4月1日 発行
157ページ
1540円(税込)
対象:中学生から

いのちに価値づけはできるのか? ~10代の3人と語り合った記録

1936年生まれの最首悟さんと10代の中高生との対話が1冊の本になりました。2022年10月から2023年4月にかけ、4回にわたって行われた対話です。
「頼り頼られるはひとつのこと」「私の弱さと能力主義」「開いた世界と閉じた世界」「いのちと価値のあいだ」と章タイトルを立て、丁寧な対話から“共に生きるとは何か”を考えていきます。

主に著者の第4子で重度の知的障害のある星子さんとの暮らしや、津久井やまゆり園事件の犯人植松青年とのかかわり、1977年から通う水俣の地と水俣病などについて語っています。ページをめくっていくうちに本を読んでいるというより、実際に著者の声を聞いているような感覚になりました。直に話を聞いているかんじ。語り口はやさしく、読みやすい。しかしとても重いテーマも含んでいます。
能力主義と優勢思想、個、自立、責任、差別、脳死…いのちの価値って何だろうと自分事として考えるきっかけを与えてくれる、そんな1冊です。

なかでも興味深く読んだのは、著者の星子さんとの日々のことです。目が見えず、しゃべることもできない星子さんですが、彼女に頼っているといいます。本当に生きているだけでいいと思える存在。それってすごいことだと思いました。感覚的にわかる気もしました。

小さいコラムや巻末には本文に出てきた本や本文で考えたことをさらに考えるためにおすすめの本の作品案内も載っています。ぜひ参考にしてみてほしいです。 (す)

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