クリーンヒット ⚾ フィクション
『スラムに水は流れない』
ヴァルシャ・バジャージ 作
村上利桂 訳
あすなろ書房 刊
2024年4月 発行
239ページ
1760円(税込)
対象:小学校高学年から
人は、水なしでは生きていけない。でも、ほんとうに必要なのはそれだけじゃない!
インド第2の都市ムンバイのスラムには約1200万人の人口のうち40%近くが住んでいるが、水は市全体の5%しか供給されておらず、慢性的な水不足に陥っていた。上下水道も完備されていないため、水を手に入れるためには毎日水を汲む列に並ばなければならない。詩を書くのが好きな12歳の少女ミンニは、慈善団体の運営する私立の学校に通いながら、このムンバイのスラムで両親と兄と暮らしていた。
ある日、金持ちのお抱え運転手である友人の叔父が、主人の留守中にミンナと兄のサンジャイ、友だちのファイザを新車に乗せてくれることになるが、この夜のドライブの途中で子どもたちは水マフィアが巨大な給水車を使って水を盗んでいる現場を見つけてしまう。間一髪逃げおおせたものの、水マフィアに追われるようになった兄は親戚を頼って田舎に身を隠さなければならなくなった。そんな折、母親の病気が発覚し、療養のために田舎の実家に戻ることになってしまう。金持ちのアニータ奥さまの家で家政婦として働いていた母親はミンニにそこでの仕事を託して行くのだが、勉強と家事、さらに使用人として働く生活は、だんだんと彼女を追いつめていく。そしてアニータ奥さまの夫があの晩、水を盗んでいた犯人だということが判明し……。
貧しくても誠実に生きているミンニの周りには、両親をはじめたくましくて素晴らしい大人たちがたくさん登場します。ミンニが勉強を続けられるように手を差し伸べてくれるシャー先生、娘のためにこっそりパソコン教室の奨学金を申し込んでくれていた母、未来の可能性を広げるコンピューターの世界を教えてくれるプリヤ・ディディ —— 暮らしは厳しく、子どもといえども多くの責任を担わなければなりませんが、それでも前を向いて力強く歩いていくミンニの姿に読者は希望を見出すことでしょう。誰もが恐れる水マフィアを告発するためにミンニとファイザのとった賢く勇気ある行動は、様々な試練を乗り越えてミンニが大きく成長した証でもあるのです。(か)
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