クリーンヒットフィクション
『6days 遭難者たち』
安田夏菜 著
講談社 刊
2024年5月 発行
1650円(税込)
267ページ
対象:中学生以上
「届け、届いて。私たちの命の光。」
本作は、同じ県立高校に通う3人の女子高生が、山で遭難した緊迫の6日間を描いた物語。
3人のうち1人は、強豪といわれる登山部に所属していたが、数ヵ月で退部した過去をもつ坂本美玖。残る2人、河合亜里沙と川上由真には登山の経験がない。美玖は、運動経験のない女子でも登れる山を探し、日帰りで帰れる鎌月岳を選んだ。ロープウエイがあり、実際に登るのは800メートルほど。整備された登山道を歩くことからも、遭難の心配はないはずだった。しかし、下山を前にして予定にない行動をとってしまったことが引き金となり、3人は死と隣り合わせの日々を送ることになる。
そもそも、なぜ 彼女たちは登山をすることになったのかーー。そこには、各々の事情が深く関係する。美玖は、亡くなった祖父に対する罪の意識から、亜里沙は「現実」の不安から逃げるため、由真は母親の再婚による孤独感。命の危機に直面し、各々は自分自身と向き合い、心を一新させていく。
本作では、美玖、亜里沙、由真、それぞれに焦点が当てられており、6日間の遭難における心境を、異なる立場で知ることができる。過酷な日々が、彼女たちにどのような心変わりをもたらすのか、臨場感を味わいながら体感できる1冊である。
ひときわ目を引く表紙は、新聞のよう。物語は、表紙を目にした瞬間から始まっているといえる。巻末には、長野県の山岳遭難防止アドバイザーを務める 羽根田治氏による「遭難を防ぐための五か条」と、著者による あとがき「それでも人は、山に登る」が掲載されている。あわせてお見逃しなく。(み)
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