クリーンヒット⚾ 絵本
『戦争をやめた人たち 1945年のクリスマス休戦』
鈴木まもる 文・絵
あすなろ書房 刊
2022年5月 発行
定価1650円(税込)
32ページ
対象:小学校中学年から
この星に、戦争はいりません。
1914年のクリスマス、これは第1次世界大戦中の戦場で本当にあった話です。
12月24日のクリスマスイブの夜、鉄条網を挟んで塹壕に身を潜めていたイギリス軍とドイツ軍の兵士は、それぞれの国の言葉でクリスマス・キャロルを歌ううちに、いつの間にか同じ歌を一緒に歌っていました。翌朝、銃を置いて塹壕から出た兵士たちは、共に食べ、語り、サッカーに興じてクリスマスを祝ったのでした。
鈴木まもるさんはモノクロ写真のようにほぼ単色でこの出来事を描いていきます。戦争は人々の心から色彩を奪ってしまう――様々な色に溢れた美しい最終ページを見ると、そんなメッセージも感じられます。
兵士たちは戦う相手を「敵」という記号ではなく名前を持った生身の人間として知った時、殺し合うことができなくなります。前線で自らも命のやり取りをする立場だったからこそ、当たり前のこと――敵にも名前があり、自分と同じように愛する家族があり、サッカーが好きなこと――に気づくことができました。でも自分の手を汚さない戦争首謀者たちは、敵国はおろか自国の兵士たちの命も軽んじています。それは、この戦争がこの後4年間も続いたという事実からもわかることです。
国境なき医師団の看護師として、紛争地に幾度も足を運んだ白川優子さんの著書『紛争地のポートレート』(集英社/1760円:税込)の中の「国際人道法を守っているのは誰か」という文章が、この絵本と呼応して非常に印象深いので、最後にご紹介します。(か)
「前線で負傷して病院に運ばれてきた末端の兵士と、それを取り巻く人たちは、たとえ敵対する間柄でも、争いを起こすどころかお互いを同じ人間だと尊重して接していた。兵士も一般市民も、等しく戦争によって傷つけられているのに、彼らは、それがむしろ当たり前のように、最も自然な形で国際人道法を守っていた。(124‐125p)」
★ご注文はお電話、Fax、メールにて承ります。
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メール narnia@kyobunkwan.co.jp