クリーンヒット⚾フィクション
『彼女たちのバックヤード』
森埜こみち 作
講談社 刊
2024年1月 発行
1540円(税込)
190ページ
対象:中学生以上

バックヤードを知ったとき

中学3年生の詩織、千秋、璃子は”ある出来事”を境に、これまで知り得なかった、互いの家族の事情(バックヤード)を知ることになります。 きっかけとなったのは「映画を観に行こう」という千秋からの提案。賛成した詩織に対し、璃子は口ごもりながら「ねえ、うちに来ない?ネットフリックスで映画みようよ。」と答えます。璃子には2歳の弟がいて、面倒を見なくてはいけないという理由からでした。「うちの弟、すこし変わってるかも」という璃子の言葉に深い意味があることを、この時の2人はまだ知りませんでした。

本作は、詩織、千秋、璃子の視点が描かれています。生い立ちや育った環境が異なる3人は、一つの出来事に対しても、受け止め方が変わります。さらに「きっと、彼女なら私の気持ちをわかってくれるだろう」という思い込みが、友情関係にすれ違いを引き起こすこともありました。気持ちをぶつけ合いながら、自らの気持ちとも向き合い、各々が抱える事情や背景を「知る」うちに、3人の距離は縮まり始めます。

人間関係において、相手のすべてを知る必要はないでしょう。しかし、相手のバックヤードを知ったとき、以前と比べて 向き合い方が変わったことはありませんか。一方で、1人で抱えこまず友人に打ち明け、知ってもらうことで、気持ちが楽になることもあるかもしれません。この物語は、知ること、歩み寄ること、ときに寄り添う大切さを教えてくれます。 友人・家族との関係に悩みを抱く学生は特に響くものがあるはず。大人の視点から読んでも、共感できる1冊です。(み)

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