クリーンヒット⚾フィクション
『さよならミイラ男』
福田隆浩 著
講談社 刊
2024年2月 発行
1540円(税込)
186ページ
対象:小学校高学年以上

ぼくだけに見える、ミイラ男

三橋アキトは、母親とふたり暮らしをしている小学6年生。冷蔵庫はほとんど空っぽの生活で、夜ごはんを食べるときには、母親が台所のテーブルに用意した500円玉を使い、近くのコンビニへ買いにいきます。500円玉を目にしたアキトは、母親に対してこう思います。「今日はまだぼくのことをちゃんと考えてくれている。」と。
学校の先生は、アキトを心配して自宅に電話をしたり、家を訪問するものの、母親がすごく嫌がっていることをアキトはわかっていて、一人で部屋にいる時に先生が来たとしても「母さんのことを悪くいう」にちがいないと、中に入れることはありませんでした。少年のことを気にかけているのは先生だけでなく、クラスメイトの工藤彩香もその一人。クラスでアキトが目のかたきにされているときも、彼女だけは「人を傷つけるようなこというなんて、どうかしてるんじゃない。」と、立ち向かってくれるのです。

家族・対人関係、学習面など、悩みのたえないアキト。家にもクラスにも安心できる場所がない少年は、あるとき、たったひとりで過ごせて みんなに見つからない場所を探し求め、空き教室へ向かいます。中へ入ろうと扉を力ずくで揺さぶっていたときのこと。アキトの指先に不思議な感触がはしります。そして、次の瞬間、引き戸はきしんだ音をたてながらするりとひらき……。

空き教室で、少年は黒ずんだ緑色をした、気味の悪いミイラ男と出会います。この出会いによって、アキトの世界は変わり始めます。でも、ミイラ男にはある秘密がありました。ミイラ男の正体とはいったいーー。
様々な事象が絡み合う本作の行く末は、子どもだけでなく、子どもに関わる大人にも、ぜひ見届けてほしいです。(み)

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