数年ぶりに復刊となった『おやゆびちーちゃん』。堀内さんの渾身の1冊ともいえるアンデルセンの「親指姫」が現代の印刷技術で見事によみがえったことは読者として嬉しい限りですが、初版から刷りを重ねるうちに様々な変化があったことがこの展示会で初めてわかりました。そこで皆さんに、ちーちゃんの秘密をこっそり教えます。
→左:本体/右:カバー
『おやゆびちーちゃん』はカバーを取ると本体の表紙としてまったく別な絵が現れます。これは意外に気がついていない人が多いのでは……? もったいないのでぜひ本を買った方はカバーを取ってみてくださいね。
ところが、カバーをとって広げてみると、あれれ??? 普通なら左右でつながっているはずの絵が背表紙で切れていてつながっていません。どうしてなのでしょうか。
実はこの絵本、1967年(初版)の時には箱に入っていたのです。その絵が現在のカバーとなりました。箱の中身の本がカバーの下の表紙だったというわけ。そして、箱は右側が開いている(切れている)のでこの時点では絵はつながっていたのでした!
ところが92年の重版で箱はなくなり、代わりにカバーになりました。この本は縦書きなので本は左開き、そこで絵をつなげるためになんと原画を反転させたのです!(写真右奥が92年版。手前の2020年版とはちーちゃんの向きが反対でしょ?)
それを今回の重版では原画と同じ向きになるように表紙を変えたため、絵がつながらなくなって背表紙で切ることになったのだそうです。紆余曲折を経て2020年版の『おやゆびちーちゃん』が出版されたことがこうやって本を見ることでよくわかりました。でも、その時々でできるだけよい形にしようと出版社も工夫したことが見て取れます。
『おやゆびちーちゃん』はダイナベースというフィルムへの描き分け版で印刷されているので、絵本と同じ場面の原画は存在しません。唯一、堀内誠一さんの肉筆画としてあるのは表紙(カバーの絵とその下の本体の絵)だけ。その貴重な2点の原画が今回は特別に展示されています。色鉛筆の繊細な表情が大変美しい原画を、皆さんにぜひご覧いただきたいと思います。
★『おやゆびちーちゃん』は制作部数が決まった限定復刊です。在庫がなくなり次第販売終了となりますので、ご希望の方はこのチャンスをお見逃しなく!
『おやゆびちーちゃん』アンデルセン 作/木島始 訳/堀内誠一 画/福音館書店 2000円+税
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