戦争や平和について考えるとき、体験者の話を直接聞くことや現場を訪れること、写真を見ることなどと同じくらい私たちの心を揺さぶるのは「物語の主人公の体験を通して、その出来事を自分の体験とすること」ではないでしょうか。優れた文学は読者をその世界に連れて行き、まるで自分がそこにいるかような深い体験をさせてくれます。私は今ここにしかいられませんが、物語を読むことで多くの体験を自分のものとできるのです。物語の中には過去・現在・未来とあらゆる時間があり、物語を読むことはよりよい未来について考えることにつながります。「本を読むって、やっぱりおもしろい」と改めて感じていただければ嬉しいです。
『灰色の地平線のかなたに』R.セペティス作/野沢佳織訳/岩波書店 2100円+税
『わたしたちが自由になるまえ』J.アルバレス著/神戸万知訳/ゴブリン書房 1500円+税
『八月の光 失われた声に耳をすませて』朽木祥作/小学館 1400円+税
『過去への扉をあけろ』H.J.ペライ作/酒寄進一訳/童話館出版 1500円+税
『弟の戦争』R.ウェストール作/原田勝訳/徳間書店 1200円+税