今年生誕100年を迎える山本忠敬さん。『しょうぼうじどうしゃじぷた』や、『とらっく とらっく とらっく』などの絵本は、出版から50年以上経っているにもかかわらず、のりもの好きな子どもたちに今も変わらず愛されている作品です。この山本忠敬さんの生誕100年を記念して、先日福音館書店から2冊の絵本が復刊になりました。幼児絵本シリーズと同じ版型の『とっきゅうでんしゃ あつまれ』と、こどものともサイズの『でんしゃがはしる』の2冊です。
『とっきゅうでんしゃ あつまれ』は昔の新幹線やロマンスカーなど、大人が見ると懐かしい車両がいっぱいです。1987年1月時点でのものですから、情報としては古いことは否めません。でも車両を正面から見たり、斜め横から見たり、少し上から見おろしたりと、さまざまな角度からみた姿は無機物とは思えないような生き生きとした様子に見えてきます。きっと山本さんは一つ一つの電車に思い入れがあったのだろうなと、想像しながら楽しく見ています。
もう1冊『でんしゃがはしる』は、1970年代半ばの山手線を取材して描かれたもの。まだ山手線が全身緑色だったころの絵本です。ぐるぐると回ってすれ違うのはいろいろな会社のいろいろな電車たち。並んで走ったり、立体交差したり…ただ、ただ走っていくだけなのに、何でこんなにわくわくするのかしら!と思うくらい、楽しさがこみ上げてきます。確かにこれも情報からいえば、今は役に立たないものです。でも改めて、絵本は(たとえ乗り物絵本であっても)単なる情報ではない、ということが実感されます。子どもにとって大事なのも、このワクワク感なのではないでしょうか。ぜひ懐かしい大人も、初めて出会う子どもも一緒になって、山手線のぐるぐる周りを楽しんでください。