去る2月20日、昨年6月に逝去された翻訳家・中村妙子さんの追悼イベントを行い、中村さんのお弟子のひとりである翻訳家・中野怜奈さんと、中村さんの数ある訳本のなかからロザムンド・ピルチャーに焦点を当てて版元の朔北社社長・宮本功さんにお越しいただきお話をうかがいました。
児童文学、ミステリー、C.S.ルイスの著作と幅広く翻訳を手掛けていらっしゃる中村妙子さん。豊かな表現力と鋭い感性の持ち主でいらした中村さんが大切にされていたこと、それは、「原書を読んで、自分がおもしろいと思ったものを翻訳する」ことでした。
とりわけピルチャーの作品は、外国からの帰路に立ち寄った本屋で見つけて飛行機のなかで一気に読み、「この本を訳したい」と強く思われたのだとか。
今回トークで取り上げた『シェルシーカーズ』は、心筋梗塞をおこして退院したばかりの60代の女性ペネラピが主人公。生きることの喜びを感じつつ、これまでの人生について回想するペネロピ。画家である父親が描いた「シェルシーカーズ」という題の絵を軸に、ペネラピと彼女を取り巻く人々の心の機微が丁寧に描かれているのが特徴です。ぺネラピ、その母であるソフィー、そして自身の３人の子どもたちと語り手の視点を巧妙に変えることでストーリーに起伏が生まれ登場人物の個性やそれぞれが紡ぐ物語が引き立つ作風は見事で、豊かさとは何なのかを問いつつ、戦争がいかに人々を翻弄させて心身に見えない爪痕を残すかについても深く考えさせる内容です。ピルチャーの代表作として知られています。
当日、会場には中村さんのふたりのお嬢さまもいらして「娘から見た母親像」について少しお話しくださったのですが、中村妙子さんが少なからずこの作品にご自身を投影されたのではないかと感じました。
長編ですが、読後にはさわやかな風が通り抜ける、そんな1冊です。
ー＊ロザムンド・ピルチャーの作品＊ー
『シェルシーカーズ』上下 定価各1,650円（税込）
『ロザムンドおばさんの贈り物』定価1,320円（税込）
『ロザムンドおばさんのお茶の時間』定価1,320円（税込）
『ロザムンドおばさんの花束』定価1,320円（税込）
すべて朔北社
ー＊版元品切れ・在庫僅少本＊ー
古書『恋をするエイラ』上中下 3冊セット1,650円（税込）
古書『狩をするエイラ』上中下 3冊セット1,650円（税込）
すべて評論社
在庫僅少『封印の島』上下 定価3,080円／定価2,860円（ともに税込）／みすず書房
＊こちらは在庫1点ずつとなります。
店頭で行っている古書フェアのなかでも、今回特別に「エイラ」のシリーズのみ通販を承ります。
返品・交換はいただけませんのでご了承ください。
小口に若干のシミ、全体に経年劣化はありますが、商品としてはおおむね良好です。
ー＊そのほかのおすすめ＊ー
『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー／定価990円（税込）／早川書房
『鉄道きょうだい』E.ネズビット／定価1,760円（税込）／教文館
『クリスマス物語集』定価1,540円（税込）／偕成社
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