クリーンヒット ⚾ フィクション
『メイジー・チェンのラストチャンス』
リサ・イー 著
代田亜香子 訳
作品社 刊
2025年1月 発行
2460円(税込)
248ページ
対象:中学生以上

あらゆる世代に読んでほしい、家族の、先祖の、友情の、成長の、そして愛の物語!

中国系アメリカ人のメイジーは、11歳の夏休みをミネソタ州ラストチャンスにある祖父母が営むチャイニーズレストランで過ごすことになりました。祖父(オパ)の病気がとても悪かったからです。大都会ロスアンゼルスで暮らしていた時には自分のルーツを気にしたことなどなかったメイジーですが、町にアジア人は彼女の一家だけという小さな田舎では、人種を理由に同じ年頃の女の子からいじわるをされることも。そんな折にレストランの事務所の壁に貼ってある古い写真を目にしたメイジーは、150年以上前に中国からアメリカに渡って来た先祖(ひいひいおじいちゃん=ラッキー)の物語をオパから聞くことになるのです。それは中国人移民としての、先祖の苦難の歴史でもありました。

過酷な鉄道敷設作業に従事した後、サンフランシスコで料理人として働くものの、窃盗の濡れ衣を着せられて逃げなければならなかったラッキーの物語にメイジーは夢中になります。ラッキーが経験した理不尽な差別や、同時に彼を助け、温かく支えてくれた人々との出会いは今まさにメイジーが体験していることと地続きで、単に過去の歴史として片づけられるものではありません。その証拠に全米各地で巻き起こっていた移民・難民の排斥運動はラストチャンスにまで波及し、レストランの前に立っていた大きな木製のクマが盗まれて「中国へ帰れ!」という脅迫状が残されるヘイトクライムまで発生します。一体誰がこんな卑怯な犯罪をおこなったのでしょうか?

物語の背景には現代的な問題が潜んでいるものの、主人公のメイジーをはじめ魅力的で個性的な人物が多数登場するので、ハラハラしながら読み進めることができます。ラストチャンスに来てメイジーが最初に出会ったちょっと変わった男の子ローガン、レストランの常連客で大量の料理を一人で注文する高齢女性レディ・ベス、オパの古い友人で今はなぜか関係が断絶しているドイツ人のヴェルナーさん、母の小学校時代からの友人ホームズ校長――みんなそれぞれに表には見せない優しさを持って関わり合っていることが、物語全体を包む幸福感につながっています。良いこと(人)も悪いこと(人)も、「ものごとは必ずしも、みかけどおりとはかぎらない」。ラストチャンスで過ごした夏は、メイジーにたくさんの成長の機会を与えてくれたのです。(か)

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