クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『わだかまってばかり日記 ―本と共に―』
岩瀬成子 著
理論社 刊
2025年1月 発行
222ページ
2200円(税込)
対象:大人
子供は ままならない時間を生きている
1977年のデビュー以来「子供」を描き続けてきた作家・岩瀬成子さんが、自身の子ども時代を綴ったエッセイ集。幼いころにあった出来事や見た風景をこれほど詳細に覚えていることに驚きを禁じえませんが、それと同時に子どものときには言葉にできなかった自らの思いを今も身の内にはっきりと刻んでいることが、作家「岩瀬成子」たる所以だと感じました。
岩瀬さんの子どもの頃の思い出に並行するように紹介される様々な作品は児童文学に限りませんが、そこに描かれる子どもの姿は、自分でも説明のつかない苛立ちや不安、悲しみや喜びを抱えて生きていた岩瀬さんと重なる子どもたちです。物語の子どもは決して大人がこうあってほしいと思うような無垢な存在ではなく、鋭い観察眼で大人の世界を批判的にじっと見ているような力強さがあり、同時に生きることの大部分を大人(親)に依存しなければならないやるせなさも感じていることがわかります。
私自身はのんきな子どもで、大した葛藤もなくぼんやりと大人になってしまいましたが、それでも岩瀬さんのエッセイを読んでいるとふいに、子どもの頃の記憶と感情が深いところからあぶくのように上がってきてポンとはじけるのを感じました。
本エッセイの中で紹介されている『マイ・ゴースト・アンクル』(バージニア・ハミルトン作)や、『夜の鳥』(トールモー・ハウゲン)、「タネリはたしか一日嚙んでゐたやうだった」(宮沢賢治)などは、のんきな小学生の私にとって自分の理解の範疇を超える本だったのですが、大人になった今だからこそもう一度手に取ってみたいと感じさせるブックリストとしても魅力的な1冊です。(か)
【お知らせ】3月15日(土)10時半からナルニア国店内で、岩瀬成子さんの講演会を開催します。詳細は近日中にホームページにアップの予定です。皆様のご参加をお待ちしております!
★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メールでのお問い合わせは下記のフォームからどうぞ。