ベスト👍 フィクション
『山のバルナボ』
ディーノ・ブッツァーティ 作
川端則子 訳
山村浩二 絵
岩波書店 刊
2024年7月12日 発行
定価869円（税込）
188ページ
対象：中学生から
『古森のひみつ』を生み出した著者のデビュー作
この夏、岩波少年文庫に新たな仲間入りを果たした1冊。作者は『古森のひみつ』で知られるイタリアの作家ディーノ・ブッツァーティです。
本書の主人公は、イタリア北東部の山岳地帯で森林警備にあたる若き隊員バルナボ。12人の隊員仲間と任務にあたっています。
たんたんと日々を過ごしていたバルナボですが、ある出来事から職を解かれてしまいます。隊員仲間でもある友人のベルトンと別れて新しい人生を歩むものの、心にはいつも宿舎の立つ森や、その向こうにそびえる雄大な山々がありーー。
『古森のひみつ』や『タタール人の砂漠』（ともに岩波書店）で好評を博したブッツァーティですが、実は本書が1作目。美しい自然描写、とりわけモミやカラマツの香る森、天にそそり立つ岩壁の急峻な様などは登山家でもあったブッツァーティ自身の体験や暮らしに根ざしたもので、その幻想的な世界は後の小説にも共通しています。
アニメーション作家であり絵本作家としても活躍する山村浩二さんが『古森のひみつ』に続き表紙や挿画を手掛けており、特有の線画がいっそうストーリーを引き立てます。
静謐な物語を探す人にもおすすめの本です。 （い）
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