今年になって、かこさとしさんの作品の復刊がいくつか続いていましたが、これは全くの新刊です。ご存命の間には日の目を見ることがなかった幻の作品(紙芝居)が新たに絵本となって今年出版されたのは、ご長女・鈴木万里さんの想いが大きかったことがあとがきから読み取れました。
これはかこさんご自身の体験を元に描かれた「戦争」のお話です。昭和19年、18歳の高等学校の2年生だったかこさんは盲腸炎になって入院をしますが、そこで彼の手術をしてくれた先生に召集令状が来て、かこさんが退院をする前に出征していかれたのです。そしてのちにこの先生は戦死しました。
「戦争はどうして、こんな人たちを、元気で、明るくて、いい人たちを、次々殺してゆくのだろう」
かこさんの悲しみと怒りに満ちた慟哭が胸に響きます。かこさんが大好きだった美しい実りの秋をきらいにさせたのは「戦争」です。あらゆる人たちの生活を踏みにじり、命まで粗末に扱う戦争を二度と起こしてはいけない――
かこさんが30年がかりで何度も描き直しながら世に出そうとされた『秋』、その思いを私たちは引き継いでいかなければなりません。そして目をよく開いて、私たちの世の中に戦争の萌芽となりそうなものがないかどうか、しっかりと見ていなくてはならないと思いました。
☆かこさとしさんの伝記『かこさとし 遊びと絵本で子どもの未来を』(あかね書房/1650円:税込)も合わせてどうぞ!
『秋』かこさとし 作/講談社 1760円(税込)
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