ベスト👍 ノンフィクション
『十歳、ぼくは突然「敵」とよばれた 日系アメリカ人の政治家 ノーマン・ミネタ』
アンドレア・ウォーレン 作
もりうちすみこ 訳
汐文社 刊
2019年12月 発行
本体1,600円+税
247ページ
対象：小学校高学年以上
今こそ知っておきたい歴史の記録
太平洋戦争中、アメリカに住む12万人の日系人が強制収容所に送られた事実を知っていますか？ 彼らは罪を犯したわけではなく、ただ敵国である日本人の子孫だというだけでいわれのない差別と迫害を受け、収容所で過酷な生活を強いられました。後に国会議員となって国に公式な謝罪を認めさせたノーマン・ミネタ氏も、家族と共に中部ワイオミング州のハートマウンテン強制収容所に送られた一人でした。
アメリカ市民としてまっとうに生きてきた人たちが、戦争によってゆえなく仕事も財産も住む場所も奪われ、ほとんど着の身着のままで退去されられたというのは、アメリカにとっての負の歴史です。ジャーナリストである著者はその苦い事実から目を背けることなく、国家権力が過ちを犯すとどれほど多くの無実の市民の人権が侵害されるかを冷静に描き出します。当時の様子を写した多くの写真も、読者の理解の手助けになることでしょう。
これはある日系人家族の歴史ですが、形を変えて今も残る差別や敵意に対する警告でもあります。私たちは自分の中の差別と同時に、国家が行う差別についても厳しく見守ることが必要なのです。 （か）
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