ベスト👍 ノンフィクション
『絵本画家 赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』
赤羽茂乃 著
福音館書店 刊
2020年4月 発行
本体2,500円+税
610ページ
対象:大人
ひとりの絵本画家の、そしてひとつの家族のものがたり――
日本初の国際アンデルセン賞画家賞に輝き、だれもが一度は目にしたことがある数々の絵本を描いた赤羽末吉の生涯を、義理の娘で赤羽末吉研究の第一人者でもある著者が記した記録――、そして物語です。
戦前の東京下町の文化に触れて育ち、22歳で旧満州にわたり、その風土に親しみ、満州の芸術を高めることに励みながらも敗戦後の1947年に帰国。その後はアメリカ大使館に勤務しながら、絵本画家として生きるようになった赤羽末吉。日本の近代・文化史の一面をのぞくような生涯は、まるで大河ドラマを見ているようです。約600ページの大部の書にもかかわらず、嫁として義父母に真正面から向き合ってきた著者の温かくユーモアのある語り口に、あっという間に引き込まれます。
貴重な写真、年譜、作品リストなどの資料に加え、国際アンデルセン賞授賞式での、また中国再訪時の食事会での感動的なスピーチが収録されているのも嬉しく、そして何より、赤羽末吉の生きてきた道が様々な絵本の中に込められていることに気づかされます。
「あの絵本のあの絵にはそんな意味があったのか、そんなものも描かれていたのか!」と、赤羽末吉の絵本をみる目が深くなること間違いなしです。 (や)