動植物
よく知っている動物や植物もキリスト教では重要な意味を表わす場合があります。その入り口をちょっとだけ覗いてみましょう。
●ぶどう
キリスト教美術においては一般に、聖餐の秘蹟におけるぶどう酒、キリストの血、あるいはキリスト自身の象徴でもあります。
●鳩
鳩は祭儀的に清い鳥とされ、神への供え物として捧げられました(創世記15:9、レビ1:14など)。
旧約聖書:ノアの箱舟物語で、鳩はオリーブの小枝をくわえてノアの元へ帰還し、水が引いたことを知らせました(創世記8:8-12)。
新約聖書:イエスの洗礼の際に現れた聖霊を象徴します(マタイ3:16、ヨハネ1:32)。
カタコンベ壁画においては神の救済の範示の図像となりました。また、三位一体の聖霊の象徴、平和の象徴でもあります。
●オリーブ
洪水の後、ノアが放った鳩が、オリーブの小枝をくわえて戻ったように、神と人間の和解、平和、神の慈しみによる繁栄と神の祝福を象徴します。ユダヤの伝承では、オリーブは王、イスラエル、パラダイスにある命の木の象徴と考えられています。
●小羊
イエス・キリストの称号です。過越の小羊が、イスラエルの民を奴隷から解放した出来事のしるしであるとすると、イエス・キリストの死は、人類を罪から解放し、自由を獲得させる出来事でした。神の小羊は、キリストの十字架での自己奉献を記念させるとともに、黙示録的な意味において、神の国の終末的完成を先取りする象徴であり、聖餐の本質を告げる重要なイメージとなっています。
●バラ
白バラは純潔、無垢、処女性を、赤バラは愛、殉教、キリストの受難を象徴します。また、花の女王とされるバラは、「棘のないバラ」として、聖母マリアとも結びつけられています。
●ユリ
純潔を表し、マリアの処女性や無原罪の宿りを象徴し聖母マリアの花として知られます。また、球根が毎年芽を出すことから再生、永遠の命のシンボルともされています。
●没薬
ミルラの木から採取され、その芳香が珍重された非常に高価な樹脂。乳香とともに、聖書によく出てくる香料です。新約聖書では、東方の三博士が幼子イエスへの捧げ物として持参しました。
●乳香
アラビアや北アフリカ原産のカンラン科の高木である乳香樹から採取される白色の樹脂で、香水や薬品の原料として使われます。旧約聖書では、神によって神聖な香として定められ、祭壇で焚かれました。また、新約聖書では、東方の三博士が幼子イエスへの捧げ物として持参しました。
●ナルド
インドおよび東アジアの原産で、オミナエシ科に属する多年草ナルドスタキス「カンショウコウ(甘松香)」のこと。その根から高価なナルドの香油が調製されます。ナルドの香油は、埋葬の準備に用いられるものの一つで、首の細い小さなビンに入れて貯蔵されました。旧約聖書(雅歌1:12、4:13-14)にも新約聖書(マルコ14:3、ヨハネ12:3)にもナルドの名前が出てきます。「そのときマリアが、純粋で非常に高価なナルドの香油を1リトラ持ってきて、イエスの足に塗り、自分の髪でその足をぬぐった。家は香油の香りで一杯になった。 -ヨハネ12:3-
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